【今週の3曲】The Velvet Undergroundの3曲

短期集中David Bowie(デヴィッド・ボウイ 1947 – 2016年)特集。
2003年リリースの通算23枚目(カバー1枚とバンド「Tin Machine」の2枚を入れると26枚目)のアルバム『Reality(リアリティ)』を取り上げておりますが、本日も番外編で。

昨日は『Reality』にてDavid Bowieがカバーした「Pablo Picasso(パブロ・ピカソ)」のオリジナルをリリースしたバンドThe Modern Lovers(モダンラバーズ)の楽曲をご紹介しましたが、本日はそのThe Modern Loversに多大な影響を与えた、NYのバンドThe Velvet Underground(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)の楽曲を3曲取り上げることにします。

メインソングライターでボーカル&ギターのLou Reed(ルー・リード 1942 – 2013年)はDavid Bowieと結構深い関わりがあったりもするので。

バンドについてご存じなくても、Andy Warhol(アンディ・ウォーホル 1928 – 1987年)が手掛けた、バナナのジャケットはなんとなく見たことがあるという方も多いのではないかと思いますが、実際聴いたことがある人ってどのくらいの割合なのでしょうね?

バンド名の記載は無く、白地に黄色いバナナとAndy Warholの名前、絵の上部に「Peel Slowly and See(ゆっくりはがして、見ろ)」と小さく記載されただけのキャッチーなジャケットながら、内容はというと、こんな感じ。

The Velvet Underground – Heroin (song only)
The Velvet Underground – Heroin

先の話の続きでちょっと余談ながら、年長の音楽ファンやライターとか評論家が「The Beatles(ザ・ビートルズ)について知っているのはある程度当然。基礎知識」と思っていても、実際のところみんなそんなにThe Beatlesのこと知らない。という旨の記事を読んで、まあそうだよなー。と思いました。
古今東西世の中に日々発表される音源の総数は増え続けているわけだし、古い作品との時間的距離は離れていく一方なので、それは当然そうですよね。

とは言えThe Beatlesがポップミュージック史上で最重要グループなのは、どのくらい聴いているかは別として大体の人がある程度認識しているのではないかと思います。

で、The Beatlesがメジャーな広範囲への影響を及ぼしたのに対し、このThe Velvet Undergroundというバンドは、言わば裏番のような存在で、マイナーでアンダーグラウンド寄りの大多数のグループに直接的にせよ間接的にせよ多大な影響を現在に至るまで与え続けている、その手のアヴァンギャルドでダークなロックの始祖とも呼べる存在です。

まずご紹介しました「Heroin(ヘロイン)」。
英雄的女性の「Heroine(ヒロイン)」じゃなく、モロ危険薬物の歌ですからね。
この楽曲は1967年に発表したデビュー・アルバム『The Velvet Underground and Nico』に収録。

本作について以下引用

発売当時はヒットしなかったが、後世への影響力が強いアルバムで、『ローリング・ストーン』誌の「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」(大規模なアンケートで選出)と「オールタイム・ベスト・デビュー・アルバム100」に於いて、それぞれ13位と5位にランクイン。
バンドのメンバーに加えて、本作ではプロデューサーのアンディ・ウォーホルの依頼によりいくつかの曲でニコが歌っている。
僅か4日間、予算3,000ドル未満で制作された。
当初は3万枚ほどしか売れずヒットしなかったが、後に再評価され、今では名盤とされている。

Wikipediaより

もう一つ付け加えると、David Bowieと名作の誉れ高いベルリン三部作や1995年の問題作『1.Outside(アウトサイド)』を共作したBrian Eno(ブライアン・イーノ 1948年 – )による、

ヴェルヴェッツのレコードは当時3万枚しか売れなかったが、買った3万人全員がバンドを始めた

Wikipediaより

という有名な一節があります。

それでは同作品からもう1曲。
「Venus In Fur(邦題:毛皮のヴィーナス)」

velvet underground – venus in furs
The Velvet Underground – Venus In Furs

こちらも結構危ないテーマの楽曲で、歌詞中に出て来る「鞭」や「革の光沢のブーツ」から大体察しはつくと思いますが、そもそもThe Velvet Undergroundというバンド名からしてアブノーマルな性愛についての雑誌の名前から採られているので、そのまんまのモチーフですね。

この楽曲は最近iPhone11のCMに楽曲が使われている、Smashing Pumpkins(スマッシング・パンプキンズ)がカバーしています。
他に、一時Red Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)に在籍していたギタリストのDave Navarro(デイヴ・ナヴァロ 1967 – )も同楽曲をカバー。
Beck(ベック 1970年 – )に至ってはアルバムをフルで全編カバーしているので、気になった方は色々聴いてみて下さい。

David Bowie絡みで言うと、同作収録の「I’m Waiting For The Man(邦題:僕は待ち人)」をカバーしているのと、1971年リリースのアルバム『Hunky Dory(ハンキー・ドリー)』にて「Andy Warhol」という楽曲を作成し収録した事。
音楽作品ではありませんが、1997年に公開された映画「Basquiat(バスキア)」で銀色のカツラを被ってAndy Warhol役を演じた事を挙げておきます。

後にバンド解散後のLou Reedのアルバムを共同プロデュースしたりもしますが、それはまた別の機会に。

やがて彼らはウォーホルとの関係を断ち、ニコが脱退した後の1968年1月、セカンド・アルバム『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』を発表。より前衛色を強め、ホワイトノイズを多用した17分に及ぶ大作「シスター・レイ」が並ぶなど、より暴力性とノイジーさが際立つ作品となった。
しかし、アルバムの制作途中でリードとケイルの関係が悪化、ヴェルヴェッツを主導していた立場のリードに対してケイルはヴェルヴェッツの中で居場所を失い、このアルバムを最後にリードによってケイルは脱退させられる。
後年、リードは本作の制作状況に関して、「ウォーホルとの関係を断ったことから自由に作れるようになったが、結果的に歯止めがきかなくなり、まとまりを欠く物になった。そして、最終的にケイルが脱退する事態になってしまった」と語ってる。

Wikipediaより

少し補足すると、一見真っ黒に白に文字のみに見える2ndアルバム『White Light / White Heat』のジャケットデザインも前作に引き続きAndy Warholによるもの。

この録音作品の外せない要因として、前作の一部を手掛け、本作をフルでプロデュースしたTom Wilson(トム・ウィルソン 1931 – 1978年)の存在を挙げておきたいのですが、もう結構記事が長くなっているので、ざっくり述べると、元々フリージャズ系のミュージシャンのCecil Taylor(セシル・テイラー1929 – 2018年)やSun Ra(サン・ラ 1914 – 1993年)のプロデュースに始まり、 初期から電気化するタイミングのBob Dylan(ボブ・ディラン 1941年 – )や、Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)の名作、Frank Zappa(フランク・ザッパ 1940 – 1993年)のデビューから3作等の、音楽の歴史の中でも意義深い作品のプロデュースを手掛けた人です。

この『White Light / White Heat』は当時から多分今でも十分に規格外のノイジーで乱暴な、音楽の1つの極北に位置するアルバム。

個人的にこれは今まで聴いてきたロック系の音楽作品の中でTOP10に入ります。

本日最後3曲目はその2ndアルバムから、性転換なのか整形なのかロボトミーなのか、何かしらの手術について歌われた「Lady Godiva’s Operation(レディ・ゴダイヴァズ・オペレーション)」をご紹介します。
これはそんなにノイジーではないけれど。

Lady Godiva's Operation-Velvet Underground
The Velvet Underground – Lady Godiva’s Operation

まずこの楽曲のボーカルはLou Reedではなく、John Cale(ジョン・ケイル 1942年 – )。
ベルギーのチョコレートメーカー「GODIVA」の由来にもなった、かつて実在した11世紀の英国の伯爵夫人Lady Godiva(レディ・ゴダイヴァ(ゴディバ)990年頃? – 1067年?)を1つのモチーフとし進行して行きます。
そこに途中からLou Reedの特徴的なボーカルが入ってきて、先述の手術のモチーフと組み合わさってゆく。という流れ。

手術の件は、Lou Reedが少年時代に治療のための電気ショック療法を受けたという割と知られた話があるので、それも関係しているのかも知れません。
昔はこれ、同性愛の治療のために両親に受けさせられた。というのが定説だったように思いますが、Lou Reedの死後、実の妹が否定。「電気ショック療法は本当だが、同性愛の治療ではなかった」のだとか。

「GODIVA」のホームページにLady Godivaの伝説がまとまっていたので、引用しておきます。

領主レオフリック伯爵とその美しい妻レディ・ゴディバの伝説は、1043年、英国の小さな町コベントリーで生まれました。レオフリック伯爵は、コベントリーの領主に任命され、この小さな町を豊かで文化的な都市へ発展させようと決意しました。
大変信心深かったレオフリック伯爵とレディ・ゴディバは、初めに大修道院を建設しました。修道院はさまざまな宗教的、社会的活動の中心となり、この成功により伯爵の野心はますます燃え上がり、次々と公共の建物を建てては、領民から取る税を増やします。あらゆるものを課税の対象とし、肥料にまで税金をかけ、領民は重税に苦しみます。
心優しいレディ・ゴディバは、貧しい領民にさらに重税を課すことがどんなに苦しいことか、伯爵に税を引き下げるよう願い出ました。伯爵は断りましたが、彼女は何度も訴えます。ついに議論に疲れた伯爵は、彼女に告げます。「もしおまえが一糸まとわぬ姿で馬に乗り、コベントリーの町中を廻れたなら、その時は税を引き下げて建設計画を取り止めよう。」
翌朝、彼女は一糸まとわぬ姿で町を廻りました。領民たちはそんな彼女の姿を見ないように、窓を閉ざし敬意を表しました。そして伯爵は約束を守り、ついに税は引き下げられました。

ちなみにこれ、中世を専門とする歴史家の見解だと史実とは異なるのだとか。気になる方はWikipediaとか色々読んでみて下さい。

はい、ここまで3曲どれも主題だけをつまむと、どぎつくキワモノっぽい印象になるのではないかと思いますが、教養や文学的な素養がある程度ないと書けないもので、それぞれ非常に詩的なイメージに富んだ作品なので、毛嫌いせずに触れてみて下さい。

今回は割と筆者の好みで選んでいるので、実際のところ入門用としてはもっと聴き易く適当な楽曲も多くあります。
逆にもっとアヴァンギャルドなものもありますが。

バンドの演奏についてや、最初の方に書いた通り前衛的でアンダーグラウンドなロックとしては始祖であっても、この音楽を構成するそれ以前の影響元というのが当然ある訳で、それらフリージャズだったり現代音楽だったり前衛アートやその集団(直接の関わりの有無はともかく、辿ってゆくとオノ・ヨーコやBeckの祖父や武満徹なんかも出てくる)についても書きたかったのですが、当サイトにしてはだいぶ長くなり過ぎたので、それはまた機会があればという事で。

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