【今週の3曲】小林建樹の3曲

昨日のPrefab Sprout(プリファブ・スプラウト)に続き、冬の澄んだ空気感の楽曲をご紹介します。

小林 建樹 イノセント
小林建樹 – イノセント

シンガー・ソングライター小林建樹が2000年にリリースした6thシングル曲で、翌2001年リリースの3rdアルバム『Music Man』に収録された楽曲「イノセント」

歌い出し冒頭の「ヴェルヴェットを切り裂いた」がいきなり鮮烈で、袂を分かった人への想いが歌われているのは自明ながら、カットアップのような唐突なイメージの登場と、ややベタとも言える表現が独自の感覚でブレンドされて、ありきたりな別離ソングとは一線を画しています。

こういうカットアップ的な手法と言うか暗喩を用いた詞作はスピッツの草野マサムネが得意とする印象がありますが、草野マサムネの場合、ベタな表現を用いると「そこは敢えて入れました」感がちょっと出ちゃう感じがどうしてもあるような気がします。
その点小林建樹はベタな表現が飛び出しても自然で、俗っぽい失礼な言い方をすると、いわゆる天然っぽい印象。言い方を変えればケレン味を感じさせず、結構平気でベタです。でもキレのあるところは切れ味鋭く、表現のエリアが広い。

この「イノセント」に関しては歌い出しの最初のフレーズのイメージが以降の展開にも実に効いており、ここまでの成功例はそうそうお目にかかれないものだと思います。

曲の方はと言うと、イントロのキーボードのフレーズからしてキャッチーで、このフレーズはRadiohead(レディオヘッド)が2016年にリリースした『A Moon Shaped Pool』に収録された楽曲「Decks Dark」にも似たフレーズが登場しています。
歌詞中に冬の季語が登場する訳ではないのに冬の澄んだ空気感をイメージするのは、このフレーズと音色によるところが大きいのではないかと。まあPVの服装が思いっきり冬。という事で思い込んでしまっているのもあるかも知れませんが(しかしこれといって何のアイデアも冴えたところも無いPVだよなあ。曲の格と全然合致していない)。

で、曲中のストリングス。これが大変素晴らしく、天上から舞い降りてくるかのよう。この上ない程に上質で効果的なアレンジ。良い曲は良いアレンジを呼び寄せるという典型例ですね。

聴けば分かる通りで、この曲に限らず小林建樹という人はメロディーメーカーとして超一級。
適当な区切りではありますが、CDの売り上げがピークを迎えた1998年から今に至るまでで、最高のメロディーメーカーと言えばまず思い浮かぶのがビーイングに所属する作曲家の大野愛果。次いでこの人。不当な程に知られていないようですが。

そんな中でもこの2曲目は当時スマッシュヒットした曲で、小林建樹の全楽曲中で最も知られている楽曲。
2000年に発売された4thシングルで、同年発売の2ndアルバム『Rare』にも収録された「祈り」

小林建樹 祈り
小林建樹 – 祈り

意図した訳ではないものの、小林建樹の音楽性は、昨日紹介したPrefab Sproutと、同じく昨日文中で触れたOfficial髭男dismとを、線で繋いだ間のどこかに位置する、と言ってもそう大きくは外れないと思います。もっと売れて然るべきだったし、もっと評価されて然るべき人です。そこら辺の時代検証はそのうちまとめてやりたいと思います。

Prefab SproutのPaddy McAloon(パディ・マクアルーン)はソングライターとして最上級の評価を得ており、Wikipediaの記載によると”「ニュー・ウェイヴ以降に登場した最高のソングライターの一人」と評する評論家も多い”そうです。
これはもう少し範囲を広げてThe Beatles(ビートルズ)の時代やオールディーズの時代まで遡ったとしても最高の一人であることに変わりはないでしょう。
ここで声を大にして言っておきたいのですが、「イノセント」や「祈り」等の、完成度の高さのみならず滲み出てくる「何か」がある楽曲達もまた、Prefab SproutやThe Beatlesの傑作群に勝るとも劣らない、最上級のソングライターによる作品だと思っています。

では最後3曲目は、ライブ映像。最後のメンバー紹介のくだりはご愛嬌。

Boo Doo Loo #3 Nervous Colors
小林建樹 – Nervous Colors

1999年に発売された1stアルバム 『曖昧な引力』収録曲、「Nervous Colors」

先に紹介した2曲のシングル曲に比べるとキャッチーさは少ないかも知れませんが、個人的に小林建樹の楽曲の中で最も好きな曲。なんかハマる。クセになる。
これはアルバムに収録されたスタジオ録音のバージョンも聴いてみてほしいところ。

今ではアニメ作品の劇中音楽等を手掛けているようで、本人の名前を前面に出しての表立った活動はほとんどないようですが、間違い無く天才的な資質を持った希有な音楽家です。

現時点でサブスクには無いものの、メジャーレーベルに残した3枚は比較的安価で入手可能なので、是非聴いてみて下さい。

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