【今日の1曲】フジファブリック – Stockholm

フジファブリックの創設者であり、メインソングライターでボーカル&ギターを担当していた志村正彦が亡くなって今日で10年。

フジファブリック – Stockholm
フジファブリック – Stockholm

生前最後のリリースになった4thアルバム『CHRONICLE(クロニクル)』の最後に収録された楽曲「Stockholm」。
初の海外レコーディング場所だったスウェーデンの首都・ストックホルムの都市名をそのままタイトルにした、スケッチの様な楽曲。

バンドアンサンブルの妙で聴かせるタイプの楽曲が多かった1st〜3rdまでと、4thは音楽性がやや異なり、音がひとかたまりになった様なパワーポップ系の楽曲が多い印象(「Stockholm」に関してはパワーポップというよりプログレ色が強い)です。この変化はリリース当時、初期からの一部ファンには不評だったりもした覚えがあります。

確かにこれは1st〜3rdまでがビートルズのバンド作品だとしたら、この4thだけジョン・レノンのソロ1st『ジョンの魂』のような趣きで、言うなれば『志村正彦の魂』のような、パーソナリティが色濃く出た作品であり、それまでとは別物と言えば別物。

本記事を書くにあたり、バンド名と曲名で検索してすぐに出て来た、『CHRONICLE』完成後の志村正彦単独インタビューによると、「第1弾のフジファブリックは死んで、今のフジファブリックは、甦って生まれ変わったフジファブリック」であると語り、作品については「思ってることをすべて言えた!」「ある意味もう死んでもいいんです。」と言ってしまうほどの達成感があったと言い切っています。

そう言える程の作品を作り上げる事が出来たという点では、幸せな、と書くには躊躇してしまいますが、少なくとも不幸な人生ではなかったのだと思います。

『CHRONICLE』のような一人称の音楽、つまりは「僕、僕」で一杯の作品というのはその人自体に魅力が無いと成り立たない類のもので、それが無いとただただ鬱陶しくうるさいものになりがちです。

でも言うまでも無くこの作品には、その人間性の弱々しいながらも気高さや、情けないながらも純な美しさが息づいているようです。

そんなある種自己との取っ組み合いの如き作品の最後を締め括るというよりも、本編が終わってエンドロールのように流れる「Stockholm」は、プログレッシブ・ロックの如き「キメ」が繰り返されるも、ややラフな印象の演奏と、僅かな余力でやっているかのような脱力した少しばかりの歌とが、シンプルで生々しい分だけ、その美しさが分かり易く結晶化しているように思います。

フジファブリックの代表曲と言えば「茜色の夕日」「桜の季節」「赤黄色の金木犀」「銀河」「虹」「若者のすべて」らへんでしょうし、決して最高傑作ではないかも知れませんが、個人的にはこの「Stockholm」が一番好きです。

通称四季盤と呼ばれる「桜の季節」「陽炎」「赤黄色の金木犀」「銀河」の4枚のシングルと1stアルバム『フジファブリック』をプロデュースしたGREAT3の片寄明人が志村正彦について書いたブログ(今はFacebookに移行しているそうです)によると、志村正彦はコーネリアスこと小山田圭吾にプロデュースをして欲しがったのだそう。タイミングが合わず実現はしなかったようですが、先鋭的なサウンドに対する指向もあった事が伺えるエピソードです。
そう言えば何かの雑誌で「Wavesが好きだ」と語っていて、その時は意外な印象を持ちましたが、音については「古き良き」はともあれ、現代的・未来的な指向の持ち主だったんですね(Wavesは簡単に言うと音楽制作時に音を派手にするソフト)。
今も存命であれば『CHRONICLE』を経てどんな音楽をクリエイトしていたのでしょうか。

晩年の帽子を被った志村正彦の写真の佇まいは、同じく早世した詩人・中原中也のようです。最早、中原中也同様「伝説の人」になってしまいました。
残された側からすると、これ程のハートと才能の持ち主が突然居なくなってしまった不在感は、10年経っても全く埋まる事は無いままで、この先もずっとそうなのだと思います。

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