【今週の3曲】80年代のムーンライダーズ 鈴木博文作詞作曲の3曲

ムーンライダーズ第5弾。

本日はムーンライダーズのベーシスト・鈴木博文が1980年代に単独で作詞作曲した楽曲の中から3曲をご紹介します。

リーダーでメインコンポーザーの鈴木慶一の実弟でもある鈴木博文。
兄にも負けず劣らずの大変な才能の持ち主です。

あれこれ書くよりも聴いてもらえばすぐに分かる事なので、早速1曲目。
先日「Kのトランク」を紹介した際に説明した通り、初出は1982年ながら曰く付きの作品でもある『MANIA MANIERA(マニア・マニエラ)』収録の、「滑車と振子」

MOONRIDERS // 滑車と振子(マニア・マニエラ)
ムーンライダーズ – 滑車と振子

そんなに展開があるタイプの楽曲ではありませんが、非常に才気走っております。この作品からコンピュータを導入。
37年も前の曲なのに全然古くなっていないどころか、サカナクションの新曲と言っても通用するんじゃないかと。

歌詞の「頬にサーベル」はボーカルの鈴木慶一が元の歌詞を間違えて歌ってそのまま採用された、という話を読んだ覚えがあるのだけれど、ソース不明。鈴木博文は何冊か本を出していて、その中のどれかだったような気がしますが、発見したらソースを記載しときます。それまでは一応話半分で認識しといて下さい。しかし元の歌詞ってなんだったのだろう?気になってきた。

今の季節にぴったり過ぎて、逆に真夏に聴きたい位のひんやりとした楽曲です。
前々回の「ヴァージニティ」同様、そんなに代表曲的な扱いの曲ではないのだけれど、これも入門には良いような気がします。

同作収録の名曲「スカーレットの誓い」は、ファンの人気投票をすればかなりの高確率でTOP3に入るのではないかと予想が付きますが、いきなり聴いても多分ピンと来ない人も多いのではないかと思います(そんなことないかもしれないけれど)。
個人的にも「スカーレットの誓い」は確実にTOP10に入る楽曲だけれども、聴く順番って大事ですよね。ある程度理解していないと良さが分からないものってある。

2曲目は遡って、1980年のアルバム『CAMERA EGAL STYLO / カメラ=万年筆』より「無防備都市」

ムーンライダーズ – 無防備都市
ムーンライダーズ – 無防備都市

これはもうただただ無茶苦茶格好良い。
80年代New Wave(ニュー・ウェイヴ)の中でもポスト・パンクに分類されるタイプの楽曲で、非常に鋭角的なギターのサウンドが特徴です。

ソリッドでシャープなこのサウンドに合う日本語歌詞ってなかなか思い付かないように思うのですが、この歌詞とメロディーは凄い。「愛はSleeping Time」という一部英語混じりのフレーズもあるけれど、それも込みで完璧。
メンバーの演奏も鈴木慶一のボーカルも素晴らしい。

前にこの『CAMERA EGAL STYLO / カメラ=万年筆』は数曲除き初心者向きではない旨を書きましたが、この「無防備都市」がまさにその例外的な「数曲」の内の1曲にあたる大傑作曲。

これはもう、世界中のこのタイプの曲の中でも頂点に君臨すると言っても過言ではないと思っております。
前作『MODERN MUSIC(モダーン・ミュージック)』でNew Waveを意識し始め、今作で早々にポスト・パンク方面の極みのような1曲をモノにしてしまったムーンライダーズの面々。

同じ事を繰り返さずに、コンピュータを導入し、また次のサウンドの探索に出てしまった為、結局この感覚はこのアルバムと、シングルの「エレファント」だけにしかないものになりましたが。

取っ付きの良くない曲が多いアルバムではありますが、歌ものよりもソリッドなサウンド志向の人には優先的にお勧め出来る1枚だったりもします。

しかし改めて思うに、近年の老成したメンバーの外見のイメージから入ると、こういうキレッキレの楽曲があるとは想像が付きにくいかも知れませんね。でもあるんです。それもハンパないのが。

最後3曲目は昨日紹介した「A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE」と同じく、1986年にリリースされた、80年代最後のアルバム『DON’T TRUST OVER THIRTY(ドント・トラスト・オーバー・サーティー)』に収録された「ボクハナク」

ムーンライダーズ  ボクハナク  オリジナルver 1985
ムーンライダーズ – ボクハナク

「A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE」にしてもそうなのですが、この頃になるともうNew Waveどうこうという方法論的な話は薄れてきて、それらの技術は習得した上での、ポップミュージック/ロックミュージックとしての強度の高い楽曲を志向しているような印象。

この楽曲でのトピックスはまずボーカルを鈴木慶一ではなく、鈴木博文がメインでとっている事。これはムーンライダーズ名義でのデビュー作に収録された「シナ海」以来(だったはず)。
後半のなんというか「男らしい」声質のコーラスはムーンライダーズの弟分的バンド・カーネーションの直枝政広。鈴木博文とは政風会というユニットも結成しています。

あとは及川光博によるこの楽曲のカバーが存在している事と、音楽界以外でも、漫画家で『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクターデザインと漫画版を手掛けていた貞本義行がムーンライダーズのディープなファンで、漫画版『エヴァンゲリオン』にて「ボクハナク」をサブタイトルに引用した事(他にも「マニアの受難」という鈴木慶一作詞曲の引用と、「朝は今、駅の中」という鈴木博文作詞曲からのセリフ引用もあり)。
なお、貞本義行は直枝政広とは大学の同期で交友があるのだそう。そして、後にムーンライダーズの2枚組ベストアルバム『ANTHOLOGY 1976-1996』のジャケットを手掛けたりもしています。

他にも音楽界は勿論、映画界や、作家などにもファンは多く、Wikipediaに錚々たるメンツがずらーっと並んでいるので気になった方は見てみて下さい(aikoがムーンライダーズのファンだったのは知らなかった)。

個人的に印象深いのが、2002年に亡くなった消しゴム版画家&天才的なコラムニストだったナンシー関で、この人は今も存命だったらな、と思う一人です。

もう一人挙げると映画監督の岩井俊二。
NHKのTV番組でムーンライダーズ愛を語っていたのを見た覚えがあるのですが、名作『Love Letter』をはじめ、数作に鈴木慶一が出演しているんですよね。
そして『Love Letter』のアンサー映画になるらしい、来年1月公開の『ラストレター』にも松たか子の父親役で出演するそうなので、これは楽しみ。

話を戻しまして、「ボクハナク」はアルバムの最後から3番目、つまりは「A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE」の前に収録されており、「ボクハナク」→「A FROZEN GIRL, A BOY IN LOVE」→最後に「何だ?この、ユーウツは!!」という派手な楽曲をもって、ムーンライダーズは約5年の活動休止に入ります。

活動再開後も決して悪くはなく、良い曲も多数あるのですが、この時期とは何かが決定的に異なってしまっている、というのが、多くの人の共通認識なのではないでしょうか。

ここまでの作品群があまりにも特別過ぎました。
多少なりとも音楽が好きな人には必ず触れてみてほしい、奇跡的な作品群です。

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