【今日の1曲】ムーンライダーズ – バック・シート

音楽ファン同士での楽しい話題に「The Beatlesの曲の中で何が好きか?」というのがあります。筆者にとってのベストは以前書いた通りですが、もっと楽しく興味深い話題は「ムーンライダーズの曲の中で何が好きか?」というもの。
ビートルズに比べてその話を出来る人の数はだいぶ限られてしまうのですが。

ムーンライダーズのドラマー・かしぶち哲郎(橿渕哲郎)が亡くなって今日で丁度6年。享年63歳。今も存命なら69歳。
フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールより20歳も若い。
改めて早過ぎる死を残念に思うばかりです。

本日はかしぶち哲郎が作詞作曲を手掛けたムーンライダーズの楽曲を紹介します。

ムーンライダーズ・バック・シート Moon Riders – Back Seat
ムーンライダーズ – バック・シート

この「バック・シート」という楽曲は、1979年にリリースされたムーンライダーズの4thアルバム『MODERN MUSIC(モダーン・ミュージック)』に収録されています。
丁度昨日紹介したP-MODELのアルバム『IN A MODEL ROOM(イン・ア・モデル・ルーム)』と同年ですね。40年前。そんなに経つのか…。

アルバムの簡単な解説がWikipediaにまとまっていたので以下引用。

ルイ・マル監督の映画「鬼火」にインスパイアされたというかしぶち哲郎作の「バック・シート」ならびに鈴木慶一作曲の「鬼火」などにより、アルバム全体が暗く厭世的なムードに覆われている。サウンドは当時のニュー・ウェイヴからの影響を感じさせるソリッドなもの。当時のパンフレットなどに書かれたキャッチコピーは「オレ達の心、いつもNew Wave!」。

Wikipediaより

「オレ達の心、いつもNew Wave!」
というキャッチコピーはなかなかに時代がかっておりますが、内容の方はと言うと、ビデオデッキの登場から着想を得た1曲目の「ヴィデオ・ボーイ」が時代と密接過ぎたせいもあってかレトロポップ感漂いますが、他はまあ、あーあと「ディスコ・ボーイ」もちょっとあれですが、レコードで言うB面は非常に充実しており、個人的にはムーンライダーズのアルバムの中で1番聴いた回数が多いのがこのB面です(CDやデータだとその前のA面ラストの「ヴァージニティ」から聴くことが多い)。

端的に言って収録曲中New Wave感が全開なのは「ヴィデオ・ボーイ」のみで、他の楽曲は、ギターのフレーズや音色等のスパイス程度、要素としてのNew Wave感に留まっており、全開になるのは次作の『CAMERA EGAL STYLO / カメラ=万年筆(カメラ・エガール・スティロ / カメラ・イコール・まんねんひつ)』か、更にその次の『マニア・マニエラ』からです。

「バック・シート」はWikiの解説にもあった通り、映画「鬼火」にインスパイアされたとされる楽曲で、どこが?と言えばひとえに主人公の自殺についての作品だという点。

陰鬱でシリアスなテーマではありますが、鈴木慶一のどこか丸みのあるボーカルや、きっちり構築された丁寧なアレンジによる完成度は十分にポップミュージックとして着地しています。
この楽曲はNew Waveと言うよりも映画音楽とプログレッシブロックの要素が強いです。

かしぶち哲郎という人は、ムーンライダーズの前身バンド「はちみつぱい」のドラマーのオーディションにて自作の曲をギターで弾き語り、結果合格した。というよく知られたエピソードがある通り、ただのドラマーではなく、シンガーソングライターでもあり、映画音楽の作曲者でもあり、音楽プロデューサーでもありました。そしてムーンライダーズという異才揃いの世にも稀な集合体の中にあっても異端の人であり続けました。

かしぶち哲郎が書いたムーンライダーズの幾つかの楽曲には、言うなれば「果てしない」ものがあると筆者は思っています。
少し言い方を変えれば「果てが無い」。
フッと別の次元へとアクセスしてしまう様な。

この「バック・シート」という、行き止まりの断崖へと車で向かって行く楽曲にも、ただの終焉へと纏ってしまうのではなくて、底知れぬその先の「深淵」や「深遠」までも感じさせるものがあります。

「砂丘」や「O.K.パ・ド・ドゥ」「二十世紀鋼鉄の男」「気球と通信」等の楽曲にもフワッとしつつ同様の印象があり、特異な才能の持ち主であることは明らかです。

不穏さと穏やかさが同居する、まるで1本の映画を見たかのような楽曲を是非お楽しみ下さい。

断言しますが、ムーンライダーズは最低でも「はっぴいえんど」と同等か、本当はそれ以上に語られて然るべきバンドです。

そこの評価がちゃんとなされていない現状のままでは、日本のロック/ポップス史の評価軸がガタガタで、話にならないとすら思っています。

ただムーンライダーズはどこから聴き始めるかで、大きく印象が異なるグループでもあり、決して当たり外れが無いとは言えないので、比較的入り易いところを紹介して行く所存であります。

ムーンライダーズの話が出来る人が増えれば、日本の音楽は勿論、芸術全般のレベルが底上げされると言っても過言ではないかと。
マジで。

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